はじめに
誰しも一度は議論をしたり、その意義について考えたりしたことがあるテーマ「安楽死」。スイスでは1937年から安楽死(自殺ほう助)が合法化されているため、安楽死を選択することができる数少ない国の1つです。
日本でも安楽死を巡る事件が起きるなどをきっかけに「死ぬ権利」についての議論はしばしばとおこなわれています。
今回は、スイスにおける安楽死についてご紹介したいと思います。
安楽の認められている国
日本では違法とされている安楽死ですが、世界的に見ても安楽死が認められている国は少ないです。
2020年現在では、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、コロンビア、オーストラリア、カナダ、アメリカの一部の州でのみ認められています。
この7か国の中でも、外国人の安楽死が認められているのはスイスのみです。
スイスにおける安楽死
スイスでは1937年から安楽死が合法となっており、2019年には1214人の方が安楽死(自殺ほう助)により死亡したとされています。
その数は年々増え続けていて、特にフランス語圏のスイスでの増加が17%と顕著です。
安楽死を選択することができるのは以下の人々とされています
- 意思疎通ができる人
- 衝動的な選択をしない人
- 第三者からの影響を受けていない人
- 死にたいという意思がはっきりとしている人
- 自身の手で安楽死を実行できる人
また、絶対的な条件として
・不治の病や耐えがたい苦痛がある人
・日常生活に支障のある痛みを伴う人
・または耐え難い身体的障害のいずれかがある人
のいずれかを伴う人のみが安楽死を選択できると定められています。
スイスでは安楽死を行う際は医者を含む第三者の手では行われず、患者の意思で患者自身により薬品の摂取が開始されるため、医師の「自殺ほう助」による安楽死が行われます。
安楽死を支援する団体
スイスで安楽死(自殺ほう助)を提供している団体は5つありますが、中でも大きな団体がDignitasとExitの2つです。
2019年までに1470人が2つのどちらかの機関を利用し安楽死を行ったとされています。
Dignitas(ディグニタス)
スイスでは「Dignitas(ディグニタス)」が最も大きい安楽死を支援する団体として知られています。1998年にチューリッヒを拠点に発足した団体でこれまでに2100人以上の人々を支援してきました。
こちらの団体はスイス人のみではなく、外国人の安楽死の機会も提供しており、2015年には約300人のイギリス人がDignitasを利用し安楽死を行ったとされています。
また、安楽死にかかる金額は約7500スイスフラン(約86万円)とされており、お葬式などプラスのサービスを選択すると10500スイスフラン(約120万円)とされています。
Exit(イグジット)
ディグニタス同様に大きな団体として知られているのです。
1982年にチューリッヒを中心に設立した団体で、現在はベルン、バーゼル、ティッチーノに拠点があります。
その規模は年々大きくなっており、2020年には13万人以上の会員がいるとされています。
その内訳の60%は女性で、平均年齢は78歳と高齢者が多いです。
Exitはスイス人のみの安楽死を支援しており、安楽死を依頼するためには最低3年間はメンバーとしてExitに所属している必要があります。
安楽死の方法
スイスの安楽死の方法は最高裁により定められています。
その内容は、「安楽死を行う場合は多量の薬を摂取するなど安楽死をする人自身の手で行わなければならない。医者が手を下すなど第三者により施行されてはならない」
また、「安楽死を選択するのは自分自身でよく考えた末に出た結論であり、誰かに言われて選択をしたのであってはならない」とのことです。
もちろん、どの機関を使用したときであってもそのプロセスが決して簡単に行われるものではなく、最低でも3か月以上はかかるとされています。
スイスでの安楽死の例
スイスで安楽死を選択した日本人女性
2018年には「多系統萎縮症(ALS)」の病にかかっていた日本人女性がスイスで安楽死を選択しました。
彼女はスイスの安楽死を支援している団体「ライフサークル」を利用し、日本人で初めて安楽死により最期を迎えました。
この様子はNHKスペシャルでも報じられ大きな反響を呼びました。
2019年時点で日本人の会員は17名在籍しており、ここ3年間で急激に増え始めているそうです。
安楽死が認められない例
スイスでは若者の安楽死が認められないことが多く、過去にも20代でALSに苦しむ男性が安楽死を希望したところ、若すぎる、という理由で認められないことがありました。
ベルギーでは2014年に法改正が行われ、未成年であっても安楽死が認められることとなりました。
これにより2016年と2017年には、9歳と11歳の子供の安楽死が行われました。いずれも難病を患っており、末期で激しい痛みを伴う症状があるとされていますが、年齢がかなり若いため世界中で大きな議論となりました。
まとめ
国が違うと文化や法律も異なるため、日本では違法とされていても、海外では合法とされているものは数多くあります。
安楽死をめぐる意見は様々であるため、学校での議論のテーマとなったり、政治で議論されることもしばしばあると思います。
自国での現状や他国での状況などを知ることで、新しい発見や新たな議論が生まれることと思います。
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